橘芳 本との交友

読んだ本の整理を兼ねた本との交友録です。

寺村輝夫『王さまの料理読本ー偶然こそ成功のもとー』

ずっと読みたくて図書館で探してもなくて、あったのは前の前に住んでいた場所の最寄り図書館で「行くか?(行ってその場で読みきる)」と思いつつコロナ禍突入し、引っ越しして、縁遠くなっていてこの度やっと古本屋さんで手に入れました。 印字がなつかしい…

掛谷英紀『学者の正義』

先週までせわしない日が続いていましたが、ちょっと仕事が落ち着きました。 コロナ禍を経て、本職に復帰できて充実した毎日を送れている、とよかったのですが、現実は思うようにいかないものです。 そんなギリギリの毎日で、読める時間は少ないですが本がお…

忙しい日々の友たち

気づけば師走になってしまいました。 先週書類に日付を書くときに「11月」と書いていたくらい日付感覚がもうわかりません。 旅行から帰ったあとずっと仕事が忙しく、「過労死」という言葉が頭をよぎりました。 忙しくなりすぎると精神の骨組み(あるのかどう…

旅の友たち

旅先にいます。 一人での異国、また乗り継ぎに長時間かかるので、旅の友を連れてきました。 が、滞在先ではいろいろな人に会って本を読む時間などなく、往路は前日の仕事の疲れによる頭痛で読めなくて、やっと今からです。 4年ぶりの海外で、入国審査にへど…

宮部みゆき『名もなき毒』

職場に自己愛性パーソナリティ障害とみられる人がいます。 最初は「性格が悪い人だな」と思っていたのですが、つい先日「言動が異常だな」と感じて調べてみたら全ての特徴が当てはまり、今まで心の中で「どうしてなのでしょう」と不思議に思っていた数々の疑…

中川一政『我思古人』

以前、たまたま中川一政美術館へ行きました。絵や書を見てまわって難しいことを抜きにして「いいなぁ」と出会いを嬉しく思いました。 詩人の随筆は面白い。では、絵描きはどうかしら、と図書館で探してみました。 本書があったので、ぱらぱらと拾い読みをし…

トミー・デ・パオラ『まほうつかいのノナばあさん とびだししかけえほん』

大切な友人が出産したので、お祝いに本書をプレゼントしました。 赤ちゃんにはまだ早いので、まずは友人にこの本を見て、楽しい気持ちになってほしいなと思い贈りました。 とても丁寧に作られていて、想像以上にとびだしてくるので、何度開いても楽しいので…

久坂部羊『老乱』

約一年ぶりに読みました。 昨年の今頃は、病院で看護助手というポジションで介護の仕事をしていました。 コロナ禍のあおりを受けて仕事を失い、かつ地方に引っ越したこともあり、当時、仕事が見つかりませんでした。介護の求人が本当にたくさんあったこと、…

トルストイ民話集『イワンのばか』他八篇

前回の友人『読書からはじまる』の中に書いてあったトルストイ『イワンのばか』(岩波文庫)が今回の友人です。 『読書からはじまる』には本書の8つの話のうちの「鶏の卵ほどの穀物」がとりあげられていました。 民話なので読みやすく、どの話も面白いです。 …

長田弘『読書からはじまる』再読

新年が明けましたが、あまり休めないまま早々と仕事が始まったため、実感なく毎日が過ぎています。休日の今朝久しぶりにコジュケイの鳴き声を聞いて「あれ今何月?」と混乱しました。 コジュケイといえば、以前NHKラジオ「ひるのいこい」を聴いていたときア…

高野和明『ジェノサイド』

久しぶりの交友録。気づけば12月で驚いています。本は毎日少しずつ読んでいます。 そして、本書を久しぶりに再読。「超弩級のエンタテインメント(背表紙に書いてある)」を楽しみました。話を覚えているのに新たに楽しめる。なんて素敵な存在なのでしょう。…

コロナ禍三年目の読書

最近、友人がたくさんできました。コロナ禍三年目の読書として交友を記しておきます。 一年目、新型コロナウイルスに関する本は怪しいと感じるものが多かったので何となく手はつけず、感染症の歴史やイタリア人のエッセイなんかを読んだのを覚えています。 …

田中芳樹『銀河英雄伝説』

久しぶりの再読です。引っ越しで手放したので図書館で借りました。 一緒に引っ越さなかったのは、本棚の場所が限られていたのと、何度も読んで好きな場面は覚えていたのと、全巻再読しようと思う機会は今後多くないだろう、もし読みたくなったら、たいていの…

谷川俊太郎『定義』

石井桃子さんは、子どもに歯ごたえのある本をすすめていらっしゃいましたが、この本は私にとって歯ごたえがありすぎて、歯が折れてしまうタイプの本です。 新品が売っていなかったため、古書を購入。定価の3倍程しましたが、どうしても読みたくて買ってしま…

田村隆一『詩人からの伝言』

猫の表紙が可愛らしいです。田村さんの「猫」という名の猫なのでしょうか。 久しぶりに読んでとっても元気が出ました。 田村さんは太平洋戦争のとき、兵役を逃れるために大学に入ったけれど学徒出陣となり、終戦時には舞鶴(海軍)にいらっしゃったそうです。…

山本素石 ヤマケイ文庫『山釣り』傑作集

先日読み終わり、とても面白かった本です。 読書ができるようになりました。気づけば机の上に十数冊積んであり、自分でもわけがわからなくなったり脳が膨満したりする感じですが、とても幸せです。 本書はモンベル店舗内の本棚で見つけました。父が渓流釣り…

エリック・ワイナー『世界しあわせ紀行』

今回、再読して2回目はより面白いことがわかりました。 ただの旅行記ではなく、楽園を求めて10カ国も訪れて綿密な取材と観察を行っています。大変な仕事だったと思います。 著者の姿は、中島敦『悟浄出世』の悟浄を彷彿とさせました。 文章から、とても真面…

養老孟司『養老孟司特別講義 手入れという思想』

養老さんの講演が文字になってまとまった本です。 今までいろいろと著書を読みましたが、養老さんの考え、主張がコンパクトに詰まっている本だと思います。 しかも話し言葉なので、お話を聴いている感覚で読めるのです。 ただ、内容が多岐に渡っているため、…

ブルース・リー/ジョン・リトル(監修)中村頼永『ブルース・リー ノーツ 内なる戦士をめぐる哲学断章』

十年以上ぶりに再読しました。 ブルース・リーが残した言葉を、ジョン・リトルという方がまとめた本です。 武術を通した人生哲学が書いてあります。 読んでいると、ほんの一部難解なところもあるかもしれませんが、読み続けるとわかります。なんとなくでもい…

ローレンス・ブロック『おかしなことを聞くね』

少しずつ読書ができるようになってきて、読んだばかりの短編集です。 宮部みゆきさんのエッセイで紹介されていた本で、曰く、寝る前に1篇だけ読もうとページを開いたのに朝まで読みふけってしまったとのことで、面白い本を書く作家が面白いという本はきっと…

長田弘『一日の終わりの詩集』

今年になってから毎晩本書を(『万葉集』と交互に)読んでいました。 どうも今の私にはひとつひとつの詩を識別する気力がなく、「言葉・独り・沈黙・死」について書かれていた気がするという詩集全体の印象しか抱けなかったのですが、 心惹かれた言葉のつな…

花神ブックス1『増補 茨木のり子』

新年が明けて初めての交友録は茨木のり子さんです。 昨年9月から多忙になり、殺伐とした職場で神経は弱り、気力も削がれ、とにかく体力だけでも回復させるために睡眠時間は確保に努めた結果、本が読めなくなりました。 時間がなかったのもありますが、長い…

たむらしげる『ロボットのくにSOS』

今からウン十年前、幼稚園でもらった絵本に再会です。 やっぱり記憶どおり、よい絵本でした。 いい本、必要とされる本は、きっとなくならずに、ずっと存在していくのですね。 町や地底、ロボットの国の様子が魅力的に描かれていますし、登場人物、動物みんな…

幸田文『闘』

幸田文作品で、未読だったため手にとりました。日常の空き時間をあてての読書で、思いのほか読むのに時間がかかってしまいましたが、とても面白かったです。 幸田文の「正確な文章による丁寧な描写」を追うという、贅沢で密度の濃い読書時間が過ごせました。…

恩田陸『蛇行する川のほとり』〈1〉〈2〉〈3〉

夏に読みたい本のひとつです。 文庫本も出ているようですが、新書サイズで3冊に分けられているタイプのほうが、読むのが楽しいと思います。 なぜかというと、それぞれ語り手が違うので切り替えがしやすく、また、装丁が3冊とも色の違うシンプルできれいなも…

追憶の友②『12のつきのおくりものースロバキア民話(こどものともセレクション)』内田莉莎子再話

今でもよく覚えている絵本です。 マルーシカという名の主人公が、姉のホレーナと「やもめ(初めて知った言葉でした)」に虐げられているところから始まります。例えば寒い冬の日に「すみれをとってこい」と言われて家を追い出されてしまうのです。この状況は…

追憶の友①あきやまじゅんこ『チョイのちいさなかご』

友人(ヒト)が子育てをしています。 私はおせっかいにも、以前、宮崎駿『本へのとびらーー岩波少年文庫を語る』をあげました。 幸い気に入ってくれたようでホッとしたのですが、まだ幼児には早いのもあって、話題は絵本に。それで、子どものころにどんな絵本…

井伏鱒二『井伏鱒二全詩集』

先日、枝豆を茹でて、井伏鱒二の「逸題」という詩を思い出しました。 こういうもの。 (岩波文庫『井伏鱒二全詩集』P24) 今宵は仲秋明月 初恋を偲ぶ夜 われら万障くりあはせ よしの屋で独り酒をのむ 春さん蛸のぶつ切りをくれえ それも塩でくれえ 酒はあつ…

江國香織『ホリー・ガーデン』

学生のときに読んだ江國香織さんの作品群の中で特に印象に残っている一冊。 同時期に文庫を持っていた『流しの下の骨』『神様のボート』『きらきらひかる』も文章を今でも覚えているほど、当時繰り返し読んだものです。 いろいろな人たち(多くは女性)の生…

幸田文『どうぶつ帖』

すべての動物好き必読の本です。 (幸田文の文章をよく読んでいた私は、おそらく影響を受けて「だ・である体」で書くことにしていたのだと今さらながら気づきました。そして、自分の身の丈に合わないというか、かっこつけすぎたと反省したため、「です・ます…