橘芳 本との交友

読んだ本の整理を兼ねた本との交友録です。

追憶の友②『12のつきのおくりものースロバキア民話(こどものともセレクション)』内田莉莎子再話

 

今でもよく覚えている絵本です。

マルーシカという名の主人公が、姉のホレーナと「やもめ(初めて知った言葉でした)」に虐げられているところから始まります。例えば寒い冬の日に「すみれをとってこい」と言われて家を追い出されてしまうのです。この状況は(マルーシカは結果的に帰ってきたので)殺人未遂といえます。

「マルーシカはなきながら森へいきました」という文と、顔をふせて走っているマルーシカの絵をおぼろげに覚えています。

なんといっても絵がとても印象深く記憶に残っています。大きな火を囲んだ12のつきたちや、夜の黒色と炎、着ている服や果物の色など、いつか記憶のものと実際の絵との違いを確認してみたいです。

本書の絵を描いた方が、『ひろしまのピカ』の絵を描いた方だったと大人になってから知りました。

絵本における絵はとても重要だと思います。もし手元に置くなら、やはり子どものときに読んだ本書がいいです。(が、アマゾンでは値がつりあげられています…)

話が逸れますが、宮沢賢治の『注文の多い料理店』は多くの本が売っています。私が探しているのは子どものときに読んだ全体的にグレーがかったベージュの淡い色彩の絵で描かれていた本なのですが、ネットではヒットしません。お話の不穏な雰囲気にピッタリの絵でした。どこかの図書館には残っているかもしれませんので気長に探すつもりです。

12のつきに話を戻します。絵とともに、文も断片的に覚えています。

「さあきょうだい、しばらくせきをゆずろう」と言って、おじいさんが若者につえをゆずるところ、「とっととおいき!みつけるまで帰ってきちゃいけないよ!」「とんまなこ!なんでもっととってこなかったの!」と叫ぶホレーナとやもめ。

「とんま」は昔の翻訳でよく読む気がします。岩波文庫の『モンテ・クリスト伯』でよく使われていたので、読んでいた時期(影響されて?)よく私も心の中で使っていました。

このお話は、場面が家か森の中なので、舞台で出来そうだなと思います。焚き火の炎など、工夫すれば舞台上も映えておもしろそうです。

 

本書はいつか再会したい友人です。