橘芳 本との交友

読んだ本の整理を兼ねた本との交友録です。

トミー・デ・パオラ『まほうつかいのノナばあさん とびだししかけえほん』

大切な友人が出産したので、お祝いに本書をプレゼントしました。

赤ちゃんにはまだ早いので、まずは友人にこの本を見て、楽しい気持ちになってほしいなと思い贈りました。

とても丁寧に作られていて、想像以上にとびだしてくるので、何度開いても楽しいのです。

これはめくる人だけが得られる快感と言ってもいいかもしれません。

しかけじゃないほうの『まほうつかいのノナばあさん』を読むと、のっぽのアンソニーがスパゲッティに流されますが、本書ではそのアンソニーがこちらへ向かってきます。

棚の上などに開いて飾るのもありかもしれません。ページによって、本を寝かせるといいページと、立てるといいページがあります。

値段はそこそこですが、だからこそお祝いにピッタリだと思います。

映像ではなく紙による立体的な世界。なんだかいろいろな可能性が感じられます。

しかけ絵本は海外のものが幅をきかせているようですから、手先が器用で紙工作が得意な方や、美大生の方などはぜひ新規参入を。もし作るなら、中途半端ではなく思いっきりとびだすのをお願いいたします。安っぽいのじゃなくて、重厚なのをぜひ。

余談、「推し活」が話題のようですから、アイドルやらアニメキャラやらが本を開いたら飛び出してくるファンブックなんかを作れば売れるかもしれません。

 

その友人にまつわることについて。彼女は妊娠中に悩んでいました。

なぜなら、妊婦にとって非常に不安がいっぱいの状況だったからです。

例えば大きな不安&疑問「ワクチンを追加接種したほうがいいのか否か」。

それで、私もいろいろな意見を本で調べてみることにして、ツイッターyoutubeも見てみました。

見える範囲では、ワクチンを打ったほうがいいという意見が圧倒的に多かったです。

産婦人科医や医師も積極的に推奨し、接種しても影響ないと言っていました。

でも、その断定に至る根拠は非常に曖昧でした。

結局、友人は接種しませんでした。私はよかったと思っています。

今回のコロナ禍で、政治家の能力や仕事ぶり、情報を伝える新聞やテレビの偏りが可視化されてきたように思います。

例えば、今月2月3日に福島雅典京都大学名誉教授が東京地方裁判所において、厚生労働省に対して「情報開示請求」の訴訟を起こしたことが大きく報道されていません。

私はツイッターyoutubeで知りました。

ネット上の情報は信用ならない、玉石混交などと言われますが、それは現実世界も同じことです。要は、それらの情報をどう読み取るか、言葉をどう捉えるかではないかと思います。

具体的なやり方は、感情的にならないで書いてあることをただ読みとっていくことです。

例えば、不安なときは断定する言い方に惹かれるかもしれませんが、不安感情に流されないでその人の意見を知るのにとどめる。特にツイッター上は感情的な意見がたくさんですから、それに同調しない。自分の感情を誰かに委ねない。結論を急がない。決めつけない。

また、言葉は養老孟司さんが言っていた(友人本『手入れという思想』より)ように、名前をつけると言葉が切れてしまうので、極端な物言い、例えば「毒チン」などという言葉や、白か黒かに分断する言葉「反ワク」などという言葉に惑わされないように気をつけて、ただ読んでいく。わからないままで当たり前、考える材料を増やすために読み続けるのです。

おかしいことが「おかしい」と感じられる、悪いことをした人が捕まえられる、そんな日本になってほしいです。

ただ、その「悪い」が、コロナ禍では捉えにくいのではないかと思います。全容をなかなか計れないような、誰を捕まえたらいいのかわからない、というような。わかりやすい悪は叩きやすい(湯呑をなめた子供など)ですが、おおきな悪はなかなか叩けないのかもしれません。

とはいっても、叩く=感情的になっているということでしょうから、冷静さを忘れずにいたいものです。まずは「おかしい」ことが「おかしいね」と周りの人と共有できるようになるといいな。そのために、私は読んで考えていきます。

新聞の見出し一面に上記の「厚労省への訴訟」がバーンと出ると、新聞の売上は伸びると思います。そうなったら、新聞購読します。大手メディアにできないなら、週刊誌、また、大手新聞社を退職したフリーの記者さんに期待です。

 

と、「ノナばあさん」からだいぶ逸れてしまいました。

生まれたばかりの赤ちゃんに、たくさん楽しいことがありますように。

われわれ大人にも、にこにこ楽しいことがありますように、と願っています。

本書は、ささやかでも楽しい気持ちにしてくれる友人です。