新年が明けて初めての交友録は茨木のり子さんです。
昨年9月から多忙になり、殺伐とした職場で神経は弱り、気力も削がれ、とにかく体力だけでも回復させるために睡眠時間は確保に努めた結果、本が読めなくなりました。
時間がなかったのもありますが、長い本が読み進められないのです。集中力が保てなくなったのか、本にのめりこむと時間があっという間に過ぎてしまうのを無意識に避けていたのかはわかりませんが、つらい日々でした。
そんななか、詩は読めました。
茨木さんの詩はたくさんあり、全てが一冊になっているものはないのですが、本書は詩集未収録作品含め63も載っています。
また茨木さんの友人知人が茨木さんについて書いた文、対談も載っています。(疲れているときは詩しか読めなかったけれど…)
「茨木のり子といえばこれ」というような、教科書に載った詩を含めいくつかの詩が有名なのだろうと思いますが、出会っておきたい詩はそれだけでは足りません。
茨木さんにしか作れない「これしかない」と思える言葉の集まり、濃縮された場面、物語がたくさん残されているのだと思うと嬉しくなります。
言葉を、日本語を大切に思う気持ちが伝わります。
学校で教えてもらうだけでは到底足りないし、子供時代では読みこめない内容も多いので、詩は大人にこそ必要なものかもしれません。
ただ美麗な言葉をそれらしく並べたものや、なんのことやら訳がわからないけれど何か深い意味がありそうなものではなく、実際の生活を伴った言葉の集まり、ふとしたときに浮かび、そのときを彩ったり豊かな気持ちにしてくれる言葉の集まり、それが私にとっての好きな詩です。
例えば、東海道線に乗ったときは根府川駅であの広く青い海が目前に広がると「根府川の海」を思い出して、過去の茨木さんに思いを馳せることができる、それはほんの一瞬ですが特別なひとときです。
夜寝るまえ、明日への不安にざわつく気持ちをほんの少しでも茨木さんの詩にふれることで、「ああまだまだ読みたい面白いものがある」と楽しみを失くさずにいられたと思います。
本書は大切に精魂込めてつくられた詩を楽しませてくれ、また「詩人茨木のり子」のお人柄や仕事ぶりを見せてくれる友人です。