橘芳 本との交友

読んだ本の整理を兼ねた本との交友録です。

田中芳樹『銀河英雄伝説』

久しぶりの再読です。引っ越しで手放したので図書館で借りました。

一緒に引っ越さなかったのは、本棚の場所が限られていたのと、何度も読んで好きな場面は覚えていたのと、全巻再読しようと思う機会は今後多くないだろう、もし読みたくなったら、たいていの図書館に揃っているからいいかと思ったためです。あと、やはり戦争の話を描いているためたくさんの登場人物たちが戦死してしまい、気楽にもう一度読もうと思えない巻もありました。それに加えて私は一度の砲撃で吹っ飛ばされる名もない下級兵士たちになぜか自分を重ねてしまうのです。

とはいえ、時々無性に読みたくなります。

先々月に届いた復刊ドットコムからの配信メールに本書の愛蔵版(函入り全7集)が出ると書いてありました。やはりおもしろい作品だと思うので、減税したら買おうかな、なんて思ったのですが実現せず。

本好きとして、未だに書籍が軽減税率の対象にならなかったのが納得できていません。反駁は長くなるので書きませんが。当時、新聞は早々に軽減税率になるのが確定していた印象でした。どうしてだろうと考えて、手回しがよかったのかもしれないなと思い(政党が新聞発行していたり一部の政党よりの新聞もあったりするし)、そのように自分たちだけ助けてもらってちゃんと報道できるのかしらなんて疑ってしまい、他にも理由があって増税後に新聞とは縁を切りました(そこにいたるまでの新聞販売の方々との攻防はかなりの持久戦でした)。新聞と書籍が手を組んで、活字文化の発展に注力できるような状況にはならなかったということで残念です。書籍が軽減税率から外れたことで結果的に週刊誌のほうが報道しやすくなったのかもしれません。本好き視点の所感です。

話が逸れました。

本書を最初に読もうと思ったきっかけは、職場の先輩からの引継ぎメールの最後が「健康と美容のために、食後に一杯の紅茶」で結んであり、なんじゃこれはとネットで検索し本作品にあたったのでした。それで、書店へ行きパラパラ見ておもしろそうだったので購入&はまってしまったのでした。よく「やれやれ」とぼやく先輩でしたが、ヤン・ウェンリーの影響だったとのこと(最初は村上春樹好きかしら?と思っていました)。

再読し始めで思い出したのですが、文章が華美というか独特の言い回しがあるのがおもしろいです。

例えば、ヤンとユリアンが夕食を食べようとしていたレストランにて予約を「おこたったむくいで、その夜は小さな幸運の妖精と親しくはなれなかった。」など。

私は読んでいた当時影響を受け、家に出たゴキブリを退治したことを友だちへのメールに「床と接吻させてやりました」と書いたのですが、受け取った側は読んで「ハァ?」(中川家風)と思っただろうなと思います。苦笑

話のスケールは壮大、にも関わらず個々の描写がとても詳細で丁寧です。なので、夢中になって読んでしまうのかもしれません。

それぞれの星(国)の政治的成り立ちや立場、思惑、また登場人物たちの人となりを、人によっては生い立ちから非常に詳しく魅力的に表現しているので読み応えがあります。人を説明するのに「パン屋の2代目」と例えるのは本作以外では知りません。笑

その詳しさゆえ多くのエピソードがあり、読後数年経った今、私は話の大筋な流れよりも、各所の挿話のほうを印象深く覚えていました。

非常に多くの人物が登場しますので自分に似た人がいるかもしれませんし、様々な視点からの人々の思考や生き方も見られます。また、戦術や政治に興味がある方はそちらの展開や推移も楽しめるのだろうと思います。

本作のファンはそれぞれ好きな登場人物がいると思うのですが、それを披露しあうだけで時間がすぐ過ぎそうです。ちなみに私はポプラン、結婚するならミッターマイヤーです。なんて話すだけでその人の性格がわかってしまうかもしれません。

本書は、現実に似た宇宙の星々で多くの人の生き様を見せてくれる友人です。