夏に読みたい本のひとつです。
文庫本も出ているようですが、新書サイズで3冊に分けられているタイプのほうが、読むのが楽しいと思います。
なぜかというと、それぞれ語り手が違うので切り替えがしやすく、また、装丁が3冊とも色の違うシンプルできれいなものだからです。色も話の雰囲気に合っていて素敵です。普段あまり本を読まない人には薄さがとっつきやすいとも思います。
それから何より、1冊ごとの終わり際の引きが強いからです。
私も、本自体は薄いので、軽く読んでいたのですが、最後で「えええ!」と声を上げてしまいました。
学生時代に友人(この著者の本を初めて読む人)に本書を貸したとき、「とりあえず1冊だけでいいや」と言って帰っていった後、メールがきて、「電車で読み終わって、全部借りなかったことを後悔しています。気になる!」と書いてあったのを覚えています。笑
文庫で読む場合は、すぐに次の章のページを開かず、一度本を閉じて休憩を入れると同じドキドキが味わえるのかもしれません。
恩田さんの書く少女は魅力的です。そして、少年もまた然り。
本書では底には不穏な気配がいつもあるものの、夏の雰囲気がとても感じられます。虫の羽音や草のにおい、川で冷やしたスイカ、部活の合宿などなど。冬に読むよりは今読みたいものです。
私は中高とも運動部の部活漬けの夏だったので、こんな夏のひとときに憧れます。部活していなくとも、こんな印象的な夏は過ごせなかったはずですけれども…。
夏が終わる前のいまの時期に、現役少女たちや、もう少女ではない大人たちにも読んでもらいたいです。楽しむための読書として。
本書は、少し不穏で儚い夏のひとときを魅力的な少女たちと過ごせる友人です。