小学生の頃に図書館に行ったら、未読の本がないか必ず確認しに行っていた。
当時、たくさんある話をとびとびに読んでいたので、時系列には整理しきれず、話の意味もわからなかったところ多々だったと思うが、セリフが面白くて読み込んで覚えるほど気に入っていた。特に罵詈雑言。酔っ払ったハドック船長が畳みかける悪口なんて、例えば「異端!邪宗門!背教者!テクノロジー崇拝!官僚主義!バイキング!ベジタリアン!四カ国条約!」(原文ママ)など、今読んでも意味がわからなくて笑える。「バロー岬」を、地理の時間に世界地図で発見したときは衝撃だった。原文はどうなっているんだろう。笑
また、絵もかわいく、世界各国を舞台にしたオールカラーの大型漫画本というのに惹かれていたのだと思う。
ちなみにアニメ版は多くの場面がカットされていて、展開があっさりしていた。タンタンの声(「ドラゴンボール」のトランクスと同じだったはず)は合っていると感じた。CG映画は見ていない。
ふと思い立ち、数年前にペーパーバック本を買い集めた。出先にて、児童書コーナーがそこそこ大きい書店を回り、児童書専門の書店や、都内のタンタンショップにまで行き探した。お店の人曰く、廉価版はもう出ている分だけでこの先出版されることはないとのことだった。儲けを考えればそりゃそうだろう。欲しい話のペーパーバックを見つけられず、大型本を購入したのもある。(本棚に並べるには全部ペーパーバックが望ましいけれど、無理を言ってはいけない)
自分の手元にタンタンがあることに、「大人になってよかった…」と強く感じた。
たくさんお話があるなかで、自分が好きな話を3つにしぼろうと思ったのだが、できなかった!あえてひとつ選ぶなら『燃える水の国』か…いや『太陽の神殿』か…『タンタンチベットをゆく』か…(ちなみにショップの店員さんに聞いてみたら『ふしぎな流れ星』だとおっしゃっていた。確かにそれも面白い…!)考えてみたが、結局どれも抜かせない。ぜんぶいい。ときどき話がめちゃくちゃなのもあるけれど、それも含めていい。
登場人物がいろいろなところで繋がっているので、シリーズ全体として読むと、より楽しい。
主要なキャラクターのハドック船長、ビーカー教授、デュポン&デュボンの他、ランピョン、ネストル、アブダラー、オリベイラさん、チャン、カスタフィオーレ夫人、アルカサル将軍など、いろいろな話にまたがって登場する脇役もみんな素晴らしい。
スノーウィのかわいさはピカイチだ。原文では違う名前みたいだが、スノーウィという響きがいい。
よくしゃべるスノーウィのセリフが人間には理解できないというのがリアルで、実際に犬たちはこんなふうに過ごしているのだろうかと想像が広がる。
タンタンがエルジェによってかかれたのは1929年。それが今読んでも全く遜色ないというか、今よりもずっとかっこいい(と思う)のは、クラシック音楽などの芸術作品と同じであろう。
初期の白黒の作品などは粗くて話もメチャクチャなところがあるが、それも味があってよい。
内容や表現について現代の視点で批判するより、当時に思いを馳せ、変化を認識しながら読めばいいのだ。
「タンタンの冒険」は出不精の私を世界中へと連れて行ってくれる大切な友人だ。