本を読むことが好きなので、題名に「読書」とつけられている本を見かける度に手に取っている。
図書館で偶然、本書を目にして読んでみて、出会えたことに感謝した。
とても易しい言葉で書かれているのに、なんと重厚な内容なのだろうと驚いた。
読書について書かれた本の中でよく目にする、「読書をすると得する、こんなにいいことがある」「言葉で自分を表現しよう」「こういうよい本があるから読むべし」などの論調ではなく、非常に新鮮だった。
自分が今まで考えもしなかったこと、または頭の中でぼんやり感じていたことを、
言葉を尽くして、熱心に、本全体でこちらへ語りかけてくれている。
それを聞きとめたいと読み進めた。
話題は、本や読書にとどまらず、言葉について、記憶について、時間について、勉強について、情報について、文化について、社会について…と、多岐に渡る。
それらを茫洋とさせず、常に「人、自分」という視点から離れず語っていく。
そして、いまの時代の我々の足元を言葉によって浮き上がらせたうえで、これからを考えていく、ということの大切さを丁寧に語っている。
本書全体を通して、どうすれば人の生活がよくなっていくのかを探って、追って、説明してくれていると感じる。
そのため、著者からの「未来はきっとよくしていける」とでもいうような希望が伝わってくるように思う。
だから、読むと穏やかで前向きな印象を受けるのではないだろうか。
著者が、本や読書という営みを揺るぎなく信頼しているのが感じられる。
読後、本書を求めてネットで探したが、中古しか売っていなかった。
仕方なく図書館の本を頑張ってメモしたのだが、近日、新たに別の出版社から発売されると知り、とても嬉しい。
何度でも手に取りたい。
余談だが、メモしたことで、長田さんが平仮名を多用されているのに気がついた。
そして、時折使われる漢字によって、言葉の意味が際立つように感じられるのが発見だった。
本書は、言葉を大切に蓄えながら生活していきたいと思わせてくれる頼もしい友人である。